リニューアルに伴い、過去の開発日誌が読めなくなったのですが、2chの過去ログやユーザの方のブログなどからの参照が多い「アウトラインプロセッサに思うこと」を再掲致します。


2003/05/03

(はじめに言っておきますが、この文章はAUTLA(あうとら)の時期バージョン開発への指針を示した文書です。一応。)

AUTLA(あうとら)の開発をはじめてから5年の月日が経ちました。

AUTLA(あうとら)も発表時点では最後発のアウトラインプロセッサだったわけですが(あたりまえか・・)、この5年間にたくさんのアウトラインプロ セッサが開発され今では古い方に分類されるようです。AUTLA(あうとら)の開発を始めた当初は高機能でフリーなアウトラインプロセッサがなく、 AUTLA(あうとら)は発表と同時にわりと多くの人々の関心を得ることができたわけです。しかしその後アウトラインプロセッサ業界(?)はものすごい勢 いでバージョンアップするソフトやものすごい機能を付けるソフトも出てきて戦国時代的様相を呈し、「のんびり開発」をモットーにしているAUTLA(あう とら)はなんか取り残されてしまったような感もあります。実際他のアウトラインプロセッサを見てると「よくここまでやるな」と関心することが多々ありま す。

反戦主義の僕としては、「戦国時代ってのもなんだかな~」的な傍観的姿勢でのぞんでいましたし、AUTLA(あうとら)1.2.5が現状の完成型だと考え ていたこともあり1年以上にわたってバージョンアップせずに公開を続けていました(実際には米軍のイラク攻撃のためにバージョンアップを余儀なくされたわ けですが・・・)。そもそもパソコンソフトの世界に蔓延している、バージョンアップし続けなければ我慢できない開発者やユーザのパラノイア的状況というの もどうにかならんものかと思っていたので、「バージョンアップしないけど開発終了じゃないよ」というスタンスも有りなのではないかという実験でもあったわ けです。

しかしその間、実際にAUTLA(あうとら)の1.2.5で自分が満足しているかというとそんなことはありませんでした。むしろAUTLA(あうとら)が 根本的に抱えている大きな問題点のために悩んでいたのです。あるいはその問題をクリアしたアウトラインプロセッサが世の中に登場しはしないかという淡い期 待もしていました。しかし残念ながらAUTLA(あうとら)以後のすべてのアウトラインプロセッサが相変わらず同じ問題を抱えているのです。この問題に他 のソフトの作者は気づいていないのか、あるいは僕と同じように悩んでいるのか、それはわかりません。というか他ソフトの作者とは問題意識を共有できていな いと思います。おそらく。ですから「AUTLA(あうとら)が根本的な問題を抱えている? じゃ他のソフト使おう」という早とちりをしないように。もちろ ん他のソフトを使ってもかまいませんけど。

その「根本的な問題」とはいったい何か? というのを語るとAUTLA(あうとら)時期バージョンのネタバラしになってしまいますが、いいでしょう。

一つ目は「テンション維持」問題です。これはAUTLA(あうとら)1.0公開前のβテスターからの指摘で「確かにそうだなあ」と思いつつも放置してきた 問題なのですが、簡単に言うと「ガーッとノリで書いていきたいのに項目つくったり階層作ったりに煩わされているうちにテンションが落ちてしまう」という問 題です。これには「そんなのしょうがないじゃん、客観的に構造を考えるのがアウトラインプロセッサなんだから」という回答もありでしょう。しかし小学校の 作文の宿題でさえ原稿用紙50枚くらいの長文を書いていた僕にとってはノリの問題はとても重要で、「しょうがない」で済ますことができる問題ではありませ んでした。どうやればノリを維持しながらアウトライン化を進めることができるのか、それが「テンション維持の問題」です。

二つ目は「木構造の限界」です。AUTLA(あうとら)はツリービュー方式を採用しています。メインフォルダから枝のようにのびる構造のことです。これは アウトラインプロセッサの要で、普通この構造でなくてはアウトラインプロセッサとは呼びません。木構造は物事を整理するために非常にわかりやすい構造で、 OSのファイル管理などもほとんどの場合この木構造になっています。Windwosのエクスプローラの左側をみれば一目瞭然です。しかし、木構造には限界 があります。たとえばある程度大きなホームページを作ったことがある人ならどのようにフォルダを整理すればいいのか悩んだことがあると思います。ホーム ページ(というかハイパーテキスト)は木構造ではありませんので、木構造のフォルダ内に矛盾無く整理するのは不可能なのです。

木構造からの脱出を解いた(?)有名な著作物といえばかの有名な『ミル・プラトー』(ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ)なんてのがありますが、こ の本の序章「リゾーム」を読むと木構造を持つアウトラインプロセッサなんて使うのをやめたくなります(いや、そんなことは全然ないんですけど)。

この木構造の問題に取り組んだアウトラインプロセッサはいくつか存在しています。ほとんどの場合、カードを置くようにノード(項目)を配置して線で結ぶよ うなインターフェイスを採用しています。これは非常に正しい仕様で、木構造から脱出するにはふさわしいやり方だとは思います。しかし、実際にそうやって 作った一連の文書の集合体を一つの文章として理解するのは少なくとも我々21世紀初頭の人間の頭では困難なのです。

これはぶっちゃけて言えばソフトウェアの問題と言うよりは人間の問題なんですね。人類がネットワーク時代に突入してたかだか10年。勘のいい人は木構造に 限界があることを感じてはいるけれども、頭の中は木構造なしでは整理できない。今はまだそういう時代なんだと思います。

というわけで、この2つがAUTLA(あうとら)やその他のアウトラインプロセッサが抱える根本問題なんですが、「木構造の限界」問題は人類がリゾームの 大海原を航海できるようになるまでしばらく様子見ということで、「テンション維持」問題に取り組むのがAUTLA(あうとら)の当面の課題です。そして、 ヴィジョンはあります。かなりいい感じになってきてます。これを見て感極まって号泣する人が日本中に1000人くらいはいるんじゃないかと思います(いや そこまではいかないか)。1000字、いや数百字程度の文章でもアウトライン化して推敲するメリットが出てくるのではないかと思います。

というわけで今後もAUTLA(あうとら)をよろしくおねがいします。